今日は小説投稿コーナー「3枚チャレンジ」
第4回優秀作品の発表を行いました。

画像: 3枚チャレンジ 第4回

湊さんと、塩田さんがそれぞれ提示するテーマに沿った小説、
またはエッセイを原稿用紙3枚、1200字程度にまとめて
投稿していただくコーナーです。
テーマごとに優秀作品を選び、今回も角川春樹事務所のPR誌
『ランティエ』に掲載されます!(掲載率は2倍!)

湊さんのお題…「クイズ」;兵庫県明石市 月島あすか さんの作品

 祖母との毎日はクイズだらけです。
 例えば、カレンダーには祖母の字で「リビリハ」と書かれていたりします。
 では、ここで問題。「リビリハ」とは何のことでしょうか。この問題は祖母と暮らす中で出てくるクイズの初級編にあたるでしょう。
 正解は「リハビリ」のことでした。
 では、少しレベルをあげて中級編です。
 電話が鳴り、祖母は出る前に固定電話に表示された名前を見た。
「誰からの電話か確認してから出るんやで!」「留守番電話を聞いてから出るように!」
祖母は娘と孫から毎日のようにそう言われている。
名前の表示のところには「サオリ」とあった。
「サオリって、誰やったかいなあ」
 祖母が首をかしげている間に、留守番電話に切り替わった。
「サオリです。電話かけなおしてください」
 声を聞いても「サオリ」が誰か分からない。
 ここで問題。「サオリ」とは誰のことでしょう。
 数時間後。娘が帰ってきた。
「携帯にかけても出えへんし、家にかけても、留守電いれても出えへんし。いつまでたっても電話かかってこえへんし!何でかけなおしてくれへんのよ!」
「サオリ。どっかで聞いたことある名前やと思ったら、あんたやったんかいな」
 正解は「娘」でした。
 次の問題は上級編と言えるでしょう。祖母と暮らしている母と私ですら全く分からなかった問題ですから。
 祖母は気づいた。やかんを火にかけていたのに、いつの間にか火が消えている。湯が沸いたから、誰かが消してくれたのかもしれない。そう思い祖母は聞いた。
「おじいさんが消してくれたん?」
「わしちゃうで」
「あんた消した?」
「私は消してないで」
「ほな、誰が消したんやろ?まさかお化けとちゃうやろな」
 ここで問題。やかんの火を消したのは誰でしょう。
 ガスコンロの前をうろうろ。祖父と私に「やかんの火を消したか」と何度も聞いては、家じゅうをうろうろ。そんな祖母に、もういい加減にしてくれと私が言いそうになった時、祖母の手がやかんに触れた。
「火、つけてなかったわ」
 正解は「誰も消してない」でした。
 ここまで祖母と暮らせばクイズの初級編、中級編、上級編とやってきました。ここで祖母と暮らせばクイズ番外編もやってみたいと思います。
 祖母が手術をした時のこと。手術の翌日、
 看護師さんは祖母のお腹を見るなり驚いて
「お腹が腫れてる!先生を呼んできますね!」
と祖母が止める間もなく大慌てでお医者さんを呼びに行った。
 さて、ここで問題です。祖母は看護師さんが驚くほど、お腹が腫れていると思いませんでした。それはどうしてでしょう。
 しばらくして、看護師さんは違う看護師さんと一緒に祖母のところへ来た。
「大丈夫ですよ。腫れてないです」
初めに来た看護師さんとは違う看護師さんは祖母のお腹を見て言った。
 後日、祖母からこの話を聞いた母と私は大爆笑。
「そりゃ、腫れたと勘違いされるわ。こんなに手足は細いのに、お腹だけ一メートル以上もあるもんなあー」
 正解は「祖母のお腹周りが一メートル以上あったから」でした。

塩田さんのお題…「月」;兵庫県南あわじ市 onuicoさんの作品

タイトル【月の彼女と】

 祖母の家をぐるりと覆う夜は、深い。
 コンビニやファミレスの光がないと、夏でもとても暗いことをここへきて知った。
 この夜の闇は、わたしに重くのしかかってくる。部屋でじっとしていては息苦しく、サンダルをはいて庭にでる。そんなことを何日かくり返したころ、声が聞こえた。
 はじめは驚き、いまでも不思議だが、おかげで夜への恐れはなくなった。
 いつものようにメダカが泳ぐ鉢の前にしゃがむと、わたしは水面を指で二度つつく。すると「昨日ぶりー」と声がしてくるので同じように返す。
「きれいに映ると思ったんだけどな」
 わたしが言うと、
「まあ見上げて」と返事がある。
 この声の主、わたしは女性と思っているが、人ではない。水はスピーカーの役割をしているだけで、メダカでもない。
 彼女は、夜空に浮かぶ、お月さまだ。
「荷造りできた?」
 と彼女が訊いてくる。
 一学期だけ、わたしは祖母の家で暮らしていた。それは自ら望んだことで、妊娠中も仕事を続ける母を思ってのこと。だが、母の「再婚相手」と少し距離を置きたかった、という裏事情もある。
 そして、その救済期間がついに終わる。明日、母が赤ちゃんをつれて迎えにくる。
「ははーん。不安なんでしょ、おねえちゃーん」
 答えないでいると嫌味を言われる。
「もうっ。なによ、その言い方」
 わたしは彼女を睨む。
「でも怒るってことは——」
「ああもう」とわたしは苛立つ。「そうだよ、それもあるけど」
「けど?」
「……嫌いなの、好きになれない!」
 俯くと、「お母さんのお相手のことね」と彼女が言った。わたしは頷く。
「好きになれとは言わないけど……どうして嫌いなのか話してくれる?」
 わたしはまた頷き、彼がきて生活が一変したこと、母が甘え上手な彼ばかりを見るようになったことを伝える。
「ちょっと難しい話をするわね」
 彼女は前置きしてから、言った。
「あたしの姿が変わるのは、太陽や地球との関係性から。人も同じで、誰かの影響をうけて変わることがある」
「だから母さん変わったんだね」
「ええ」と認めると、彼女は言った。「それにあなたも」
 わたしは小さく呻き、白状する。
「こんなわたし嫌なの、怒ってばかり」
「あのね」少しして彼女は言った。「変化は、自分の力でも起こせるのよ」
「え?」
「想像してみて。あなたはどうなりたい?」
「……そんな急に」
「そうね、でも覚えていて。あなたは変われる。何度でも」
「何度でも?」
「そう。だからこわがらないで。次はあなたが変わって、周りを変えるの」
「ねえ」わたしは彼女を見つめる。「本当に最後なの? ちゃんとできるか、見ててくれないの?」
「あら、いつでも見てるわよ。話すには、いろーんな条件が必要だけど」
「うーん」とわたしは不満をもらす。
「困った子ね」彼女は苦笑する。「今日はあなたが納得するまで付き合ってあげるって」
 わたしはわかりやすく喜ぶ。それから本当に、心ゆくまで彼女と話をした。

次回も投稿お待ちしています!

第5回のテーマは…
湊さん・・・「写真」
塩田さん・・・「ペン」
〆切は、9月27日(月)とさせていただきます。
どちらかのお題を選んでいただき、原稿用紙3枚程度(1200字前後)で
作品の執筆をお願いします。
作品は小説でもエッセイでも、形式は自由です。
みなさんからの投稿お待ちしています!

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.