今日は小説投稿コーナー「3枚チャレンジ」
第5回優秀作品の発表を行いました。

画像: 3枚チャレンジ 第5回

湊さんと、塩田さんがそれぞれ提示するテーマに沿った小説、
またはエッセイを原稿用紙3枚、1200字程度にまとめて
投稿していただくコーナーです。
テーマごとに優秀作品を選び、今回も角川春樹事務所のPR誌
『ランティエ』に掲載されます!(掲載率は2倍!)

湊さんのお題…「写真」;京都市 みゆきち さんの作品

仕舞い込まれた一枚の写真。台紙を開くと若き日の両親が緊張した顔で立っていた。『お母さんもお父さんも若いな。』モーニングとウエディングドレスの二人を見てふと祖母がいない事に気がついた。そういえば駆け落ち同然で結婚したと言っていた。今となってはわだかまりもないが、この時はまだそうはいかなかったのだろう。一人娘の結婚式なのに反対したからといって顔も出さないなんて、気の強い祖母らしい。苦笑しつつ眺めていたら『捜し物あった?』と母がやって来た。
『お母さんがまだ痩せてた頃の写真見つかったで。』軽口を叩き台紙に貼られた写真をおどけて見せると、母は驚き少し悲しげに笑った。いつもなら『可愛くてモテてた。』などと得意げに話すのに、今は口もとに少し笑みをたたえただけだ。気になって『お婆ちゃんいいひんし寂しかったん?』と聞くと『腹立つやろ。結婚式なんか絶対行かへんってゆうてたわ。』らしいなと頷く。
『このウエディングドレス、お腹も大きくなっててサイズもなくて、昔やしろくに選べへんかってん。手袋も最初長いのがなくて短いの渡されて。ドレスの袖も短いのに変やん?でも無いししょうがないなって。ヴェールも同じ白でも色違ってて。よく見たらドレスもあちこちシミがあって。』母が大きく息を吸った。『お母ちゃんがいたら、違ったかなって。こんな寄せ集めになんかしんかったやろなって。』いつも気の強い母がとぎれとぎれに、吐き出す様に話している。今まで誰にも言えなかったのかもしれない。何より祖母に申し訳なかったのだろう。一人娘の幸せを願って、準備したかったであろう母親に親不孝してしまったと。若いドレス姿の母と横にいる母が精一杯堪えている。私ものどが熱く痛くなる。うっすら浮かぶ涙を隠しながら拭う母に気づかないフリをして『写真白黒やしシミとかわからんわ。沢山あっても着るの1つやし似合うドレスあってラッキーやったやん。お婆ちゃん来たら良かったのに損したな。』思いつく限りの言葉を並べていた。知らず知らず早口になる。話していないと耐えられなくて、声が震えても続けていた。『ほんまやな。今見たら可愛いな。』母がほんの少し笑ってくれた。『そやろ!髪型も似合ってる。ショートカットの花嫁なんてオシャレやん。』赤い目でまくしたてる私に赤い目の母がうなずく。『お父さんのメガネも分厚いな。昔はこんなもんか?』直立不動の父に呆れていると『あっ眼鏡!お父さん前日に踏んで割ってん。それ眼鏡屋さんに借りたやつ。』思わず二人で大笑いした。『あんたの時は自分の好きなん着てな。』優しく微笑まれて、またのどが熱くなった。『そんなん予定ないわ。それか一人でも着ようかな、お母さんと一緒に。』それも楽しいかもと想像していたら『嫌やわ恥ずかしい。あほか!』いつもの母に戻っていた。『あんた何か探してたんやろ。はよしてさっさと片付けや。』そういうと母は赤い台紙を閉じ、今度はアルバムと一緒に仕舞っていた。家族の楽しい思い出と共に。

塩田さんのお題…「ペン」;豊中市 千里のよっちゃん の作品

 和が高校生の時、私はペンケースに仲間入りした。マジック、蛍光ペン、ボールペンにシャーペン、シャー芯ケース、15センチ定規、消しゴム、すでにわんさか入っている。私は楽器店の片隅に置かれていた写譜ペン。ボディーは銀。マジック写譜ペンより格が下がるけれど、私は消しゴムで自由に消すことができる。芯のサイズは2ミリ。芯先を斜めにカットすれば音符玉が書けるという優れもの。先を立てれば音符の棒も書くことができる。和は今まで鉛筆で音符玉を書き塗りつぶして4分音符を書いていた。でも私がいればそんな必要はない。
 和は音楽を作る。頭の中にあふれるメロディーを五線紙に書き留める。だから和は五線紙と私をどこへ行くにも連れてゆく。ペンケースが変わったり、仲間がその都度淘汰され新旧の入れ替わりがある中で、私はずっと選ばれてきた。私は和の相棒だ。
 今日もペンケースから抜き出されカバンにほうりこまれ外出だ。生憎の雨でカバンの中には無造作にタオルやらも一緒くたで大混雑だ。駅の軒下で傘をたたみタオルを取り出す。そのときタオルに絡まって私はカバンの中からほうりだされた。私が地面に叩きつけられる音が雨の音にかき消される。和はタオルで自分を拭くことに夢中だ。そして足早に改札口に消えていく。私は取り残されてしまった。絶体絶命。冷たい雨にうたれながら、私はむせび泣く。どれくらい時間がたったのか雨はあがり私は誰かに拾われた。ふくよかな手に握られてノックされる。「太っ!」2ミリの芯に驚いた拾い主はそのまま私を駅の交番に連れて行ってくれた。私は交番で夜を明かす。
 「ないっ!ないっ!」和は写譜ペンがないことに気づいてあわてていた。ペンケースから取り出してカバンに入れたことを思い出す。一縷の望みで駅前交番に足を運ぶ。紛失物用紙に記入する。名称はノック式写譜ペン(シャーペン2ミリ)、イラストに特徴を書き添える。紛失したと思われる日時、場所を書き込む。それを見た警官が奥からナイロン袋に入れられた私を軽くゆすりながら和の前に持ってくる。
 「それです!」和が叫ぶ。
 「よく似たものはたくさんあるからねぇ。届けてくれた人のところに行って印鑑もらってきてちょうだい」本人が私のものだと言っているのに警官は冷たい。拾い主の住所が書かれた紙を渡される。ありがたいことに拾い主のお住まいは駅に近い。和はすぐに電話を入れて訪問する約束を取りつけた。
 「何かな?と思ったらえらく芯の太いシャーペンでよく見たら名前が書いてあるじゃない。大事なものなんだろうと思ってね」拾い主は気の良さそうなおばちゃんだった。和は何度も頭を下げて書類に印鑑をついてもらった。書類と引き換えに私は和のところへ戻ることができた。受け取って泣くくらいならもう少し丁寧に扱いなさいよと言いたかった。もう30年も昔の話だ。
 今でも私は和の右腕で音符を綴る。和は「再会」という曲を世に出して一世を風靡した。

次回も投稿お待ちしています!

第6回のテーマは…「星座」
次回からはテーマは1つに絞り、2作品を選ばせていただきます。
〆切は、11月8日(月)です。
原稿用紙3枚程度(1200字前後)で
お題にちなんだ作品の執筆をお願いします。
作品は小説でもエッセイでも、形式は自由です。
みなさんからの投稿お待ちしています!

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