このコーナーは、今年で開館30周年を迎えた大阪市立科学館の学芸員さんをゲストにお迎えして
日頃思っている様々な科学にまつわるギモンについてお答えいただくコーナーです。
30という数字にちなんで、1ヶ月間、毎週6つのギモン
つまり5週で30個のギモンを解決します!

今日ギモンにお答えいただいたのは、大阪市立科学館の学芸員
上羽貴大(うえばたかひろ)さん

画像1: 10月17日 大阪市立科学館 赤maru Science 〜30のギモン〜

Q-1何故、木から林檎は、地面に落ちるのですか?

A-1りんごにかぎらず、どんなものでも地面に向かって落ちていきますね。それは、わたしたちの住む地球が、りんごなどの地球上のものを強く引き寄せているからです。その力を「引力」といいます。引力をもつものは、地球だけではありません。実はどんなものでも、周りにあるものを引き寄せる力を持っています。りんごも、人間も、どんなものでもです!このことを「万有引力」といいます。ただし、地球のように重いものほど、まわりのものをより強く引きよせます。
つまり引力が強いのです。りんごのような軽いものの引力は弱すぎて、気づくことができないだけです。地球に限らず、月や太陽などの星も同じように引力をもつだろう、と最初に考えたのは、かの有名なアイザック・ニュートン。イギリスの科学者です。およそ300年前のことでした。彼は、りんごが木から落ちるさまをみて、そのアイデアを思いついた、と言われています。
このご質問は、その話からの引用でしょう。ニュートンの住んでいた家にはたしかにリンゴの木がありました。そこから接ぎ木により分けられた木が日本を含む世界中で今も育てられています。ただし、ニュートンのアイデアがりんごが落ちる様子から生まれたのが本当かどうかは、定かではないようです。

Q-2私は方向音痴なのですが、外で方位磁針も無いのに方角がわかる人って何なんでしょう?
太陽の位置とか言われても方角さっぱりわかりません。

A-2太陽はいつでも東に昇り南を通って西に沈むので、日ごろから太陽の位置と方角をチェックしていれば、きっと上達するはず。方角がわかる人は、太陽の位置以外のヒントを見つけるのが上手なのかもしれません。たとえば神戸なら山が見える方が北、という感じです。
ただ、東西南北がわかるのと、迷わず目的地に行けるのは、ちょっと違うことのような気がします。たとえば犬は通る道をよくおぼえていますが、これは東西南北がわかっているのではなく、道に残った匂いを頼りに道を進んでいるのです。ちなみに、ぼくは知らないところに出かけるとき、スマホの地図が欠かせません。方角は、方位磁針をつかえばわかります。地球は大きな磁石なのです。地球がもつ磁石の力を「地磁気」といいます。磁石は地磁気に反応して、N極が北を指します。渡り鳥は、頭の中に地磁気を感じる器官をもっており、方角を感じ取りながら海を渡るそうです。
実は地磁気を感じることのできる能力が人間にも備わっていることが、2019年3月に発表された研究で明らかになりました。地磁気と同じくらいの弱い磁気をいろいろな方向から人に与えたとき、その人の脳波もそれに合わせて変わっているそうです。ただし、その脳波の変化をその当人が意識することはできません。数年前に某人気バラエティー番組で、北の方角が「感覚的に」わかってしまうという特異体質の方が紹介されていました。初めて訪れる外の光もない密室に連れていかれても、北がどちらかを正確に指さしていました! これが「仕込み」でないならば、この方は地磁気で受ける脳波の変化がかなり強い人なのかもしれません。

Q-3透明なガラスはなぜ透明なのでしょうか?ガラスの中には様々な成分が含まれていると思うのですが、それらの姿はどこへ消えるのでしょう。
他には、どんなものが透明にすることが可能なのでしょうか?
水や気体と違ってしっかりとした物体があるのに透明ということがとても不思議でなりません。

A-3「ガラスが透明に見える」とは、ガラスが光を素通りさせているということですね。
人間の目で感じ取れる光は、すこしむずかしい言葉で「電磁波」と呼ばれるもののなかまです。電磁波のうち、人間の目で感じ取れるものを「光」あるいは「可視光線」と呼んでいます。つまり、人間の目で感じ取ることのできない電磁波もあります。日焼けの原因「紫外線」や、あたたかいものから出ている「赤外線」などです。ガラスは可視光線を素通りさせる材料です。しかしどんな電磁波でも素通りさせているわけではありません。赤外線や紫外線などは素通りさせず、吸収しています。つまり、ガラスの反対側には、赤外線や紫外線は少ししか届いていません。蛇や昆虫は、赤外線や紫外線を感じ取ることができるそうです。つまり、かれらにとっては、ガラスは透明なものではなく、しっかりと「見えて」いるはずです。

Q-4二酸化炭素が増えて地球温暖化になっていますが、二酸化炭素を酸素と炭素に分解することって出来ないんでしょうか?二酸化炭素が分解できれば地球温暖化もなくなるだろうし、
炭素というエネルギーも手に入るのになぁと思います。

A-4炭素原子と酸素原子2つででききている二酸化炭素分子を分解して、炭素原子がいっぱい集まった石炭のようなエネルギー資源をつくるのは、ものすごいエネルギーがいるのです。石炭を燃やしたときに生まれるエネルギーよりも必要です。これでは本末転倒。なので、二酸化炭素を分解して、炭素をよりつくりやすい他の材料にするほうがよい。それをいとも簡単にやってのけるのが植物です。光合成というのは、二酸化炭素を分解して、酸素分子と糖という植物のエネルギー源と、酸素にしているのです。そのエネルギー源は太陽の光。「人工光合成」の研究は、現在世界中でとても熱心に進められています。まだ実用段階には至っていませんが、地球温暖化の解決法のひとつになるかもしれません。

Q-5カフェや喫茶店に行くとアイスコーヒーを頼むのですが、アイスコーヒーの水滴が溜まるとグラスが自然と滑るように動き、浮いているように見えます。
どうしてグラスは自然に動き出すのでしょうか?教えてください。

A-5テーブルの上にグラスを置いて、ちょっと指でつついても、ちょっとだけ動いたら、すぐ止まってしまいます。これは、テーブルとグラスの間に「摩擦(まさつ)」と呼ばれる力がはたらいているからです。べたべた・ざらざらしている汚いテーブルは、この摩擦が強く、滑ってもすぐ止まります。とてもきれいでサラサラなテーブルは、摩擦が弱く、より遠くまで滑っていきます。グラスの底が濡れると、摩擦の力は小さくなってしまうのです。雨の日に足元が滑りやすいのと同じことですね。しかし、摩擦の力が小さくなったからといって、勝手に動き出すことはありません。摩擦の力は、ものの動きをとめようとする力で、止まっているものを動かす力ではないのです。もしも本当に自然にグラスが動き出すのだとしたら…それは、目には見えない幽霊のいたずらかもしれませんが、それより可能性が高いのは、そのカフェのテーブルはちょっと傾いているだけです。

Q-6先日買ったお菓子の保冷材にドライアイスをもらいました。
ちょうど甥っ子たちが来ていたので、そのドライアイスにお湯をかけ、煙がもくもくするのに子供たちは大喜び! そのとき思ったのですが、気の抜けた炭酸飲料にドライアイスを入れると炭酸が復活すると聞いたことがありましたが、普通の水やお湯をかけても炭酸水にはなりませんよね?
その違いは何でしょうか?

A-6炭酸ガスが溶けている水を炭酸水といいます。炭酸水や炭酸飲料は、水と炭酸ガスを高圧で混ぜることで作っています。ものすごい強い力でガスを水の中に「押し込む」ようなイメージです。ドライアイスをいれれば、普通の(炭酸水ではない)水にも、炭酸ガスが溶けこみますが、圧力が全然かかっていないので、炭酸飲料のようにシュワシュワと泡が出るようになるほどたくさんの炭酸ガスは溶けません。
ただし、「圧力をかければいいから」といって、ドライアイスを入れた水をペットボトルに入れて、フタをするのはとても危険です!!!ペットボトルが爆発することがあります。

上羽さんありがとうございました〜!

リスナーの皆さんも疑問に思うことがあったら赤maruのリクエストフォームからエントリーしてください!

そして!!採用された方には、大阪市立科学館のペア招待券をプレゼントします!!

This article is a sponsored article by
''.