----金曜の夜は憂鬱だ。

金曜の夜といえば週末を前に、多くの人々が友人や恋人と楽しいひと時を過ごす時間。
ハッピーフライデーとはよく言ったものだ。
世間は「ハッピー」に満ち溢れている。
幸せな人々の作り出す明かりを眺め、ひとつ、ため息をつく。
いっそこのまま何もかも放り出して光の中に飛び込びたい。
そうすれば、僕はこの憂鬱から解き放たれて・・・
解き放たれてどうなるのだろうか?
一体その先に何があるのだろうか?
答えは簡単だ。何もない。
だからといって、現状の僕に何かがあるのかと問われれば、答えに窮する自分がいる。
お先真っ暗とはこのことだろう。
どの道を選んでもゴールにはたどり着けない。
とんだクソゲーだ。積んでる。
だが、ゴールってなんだ?
そんなことを考えていると、遠くから名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

「あ、いた。こんなところで何をしてるんですか!淡路さん、そろそろ打ち合わせですよ!」
この男は番組ディレクターのスプラDだ。
金髪のボサボサな髪に伸ばしっぱなしの無精髭。
短パンにTシャツというラフな格好でいかにも業界人といった様相・・・というと聞こえはいいが、街に出ればただの小汚い男である。

「今、行くよ。」
男を軽くあしらってため息をもうひとつ。
これから打ち合わせを終えて、僕は何千、何万という人々に声を届ける。
淡路祐介、いや、†AWAjel†の【喋り】を【声】を待っている人がいる。
だからこそ・・・金曜の夜は憂鬱だ。

重い足取りで打ち合わせに向かい、席に着くと隣の女が声をかけてきた。

「今日も暗いですね。普段からオンエアくらい明るくしてくださいよ。こっちまで気が滅入っちゃう。オンエア以外で笑ってるの見たことないですよ。鉄仮面ですか?」
この女はズッティー。
共に番組DJを担当している。
130センチほどのこじんまりとした身長だが、態度は大きい。
一応敬語こそ使うものの、言葉の端々に刺を感じる。

「うるさい。」
「またそうやって逃げる。番組始まって2年以上ですよ。スタッフのみんなだって内心困ってるんだから。」

そんなこと言われなくてもわかってる。

「え?そんなことないよ?」
「スプラDは黙ってて!」
「はい。お口ミッフィー。」

こういうボケが一番度し難い。幼稚だ。

「ねぇ†AWAjel†、大人なんだから、もうちょっと社交性を持ちましょうよ。オンエア中の半分でいいから明るく人と接したりできないんですか?」
「放っておいてくれ。・・・じゃあ。本番はやるから。」

†AWAjel†用と書かれた原稿を掴み、立ち上がる。

「ちょっと!待ちなさいよ!もう!本当に・・・」
背中に向かって投げつけられる言葉を無視して、逃げるようにスタジオへ向かう。

昔から、演じることは得意だった。
3人兄弟の長男に生まれたこともあり、弟の面倒に追われて忙しい親に気を使いながら生きてきた。
弟がおやつが足りないとくずり出せば率先して自分のおやつを分け、自分の買ってもらったゲームが欲しいと言われれば貸してやり。
そんな風に、「いい自分」を演じている内に、学校でも、社会に出ても周りを優先し、またその中でも学習して奪われない、目をつけられないよう、息を潜めて生きるようになっていた。
いつのまにか演じることが自分の本質に変わっていったのだ。
番組での「†AWAjel†」は、明るく、どんなことにでも前向きで、人との関わりを大切にする・・・本当の僕とは真逆の人間だ。
そんな人間をいつも僕は、演じている。

「じゃあ今日もよろしくお願いしまーす。」
足早にスタジオに入り込み、荷物を机の上に放り出すズッティー。
彼女が来たということはまもなく放送が始まるということだ。
また・・・自分を偽る時間が始まる。
なぜこんなことをしているんだろう。

僕がラジオDJになったのは、「ある男」との出会いだった。
大学卒業後、社会に思うように馴染めなかった僕は、全国各地を転々としながらその日暮らしの生活を送っていた。暗い、暗い生活だった。
そんなある日、僕はその男に出会ったのだ。
初対面の印象は「小汚い男」だった。
だが悪い奴ではない。不思議とそんな気がしたのを覚えている。
「ここのきゅうりの浅漬け、まじでうまいですよ!」
飲み屋で1人、杯を傾けているとそう声をかけられた。
本当に不思議な、魅力のある男だった。
僕はいつのまにか自分の考えていることや、思いを、会ったばかりのその彼に話していた。
まるで何十年来の友人のように、そっと寄り添ってくれる、なんとも心地の良い感覚だったのを覚えている。
「こんな暗い生活を抜け出して、明るい場所に行きたい。」
そう話すと彼は笑って言った。

「あたなが周りを照らせば、そこが明るい場所になるんですよ。」

「それは・・・」
言葉に詰まった。
そんなことはわかっている。
だが輝ける人間はほんの一握りで、周りの人たちを笑顔にできる、それはきっと「選ばれた人間」で。

「誰にでもできることじゃないですけどね。」
そうだ。
知っている。
それは自分が一番知っていることだ。
僕は所詮、明るい場所を羨みながら。暗い場所で生きる人間なんだ。
明るい場所は、似合わない。

「でも、あなたにはできる。最初は嘘でも、演技でもいいんです。あなたは輝ける。」
「どうしてそんなこと言えるんですか?」
「やだなぁ。自分で言ったんじゃないですか。演じてるうちに暗い感じになっちゃったんでしょ?じゃあ、元々の、本当の淡路さんって、どんな人なんですか?」
「それは・・・」
「だから、最初は無理してでも演技でもなんでもいいんです。で、それを本当の自分にしちゃってくださいよ!簡単なことでしょ。ある意味、今までやってきたのと同じことですから。」
「そんなこと言ったって無理ですよ。どうしろっていうんですか?劇団にでも入れって?それこそただの演技だ。」
「安心してください!僕がそんなあなたにぴったりなお仕事をご紹介します!淡路さん、あなたがみんなを・・・」

そこからはあっという間だ。
僕が周りを照らすことなんてできるのだろうか?
誰かを笑顔にすることができるのだろうか?
その答えはまだまだ出そうにない。
そういえば、最後にあの男はなんと言っていただろうか。
彼の口癖・・・。

オンエアがまもなく始まる。
カウンターが進み、秒読みに入る。

「では、†AWAjel†さん!ズッティーさん!みんなを、今日一番の笑顔にしましょう!」

「ふっ。」
「え、今†AWAjel†・・・」
「今日もがんばろうな、ズッティー。」
「え、えぇ?」

金曜の夜、困惑するズッティーを横に、僕は今日もマイクへ向かう。
「みなさんこんばんは!†AWAjel†でーーす!!!!」

真っ暗だと思っていた道の先が少し光り始めた。

自分の足元から。

(†AWAjel†の心情を読み解いた人:スプラD)

今回のテーマは【スピンオフアニメ作品オフ】

(ここからリンダに戻ります)
オープニングで2年越しの「オンラジ」がありましたが・・・
ラジコでもう一度、聴きましたが緊張でめちゃくちゃ早口。
そつなくこなしている、ように聴こえたというメッセージもありましたが
全く、そんな事はないです。無言が怖くて、心を無にしてひたすら話していたら終わっていました。
終わった後、2人とも変な汗が止まりませんでした・・・
私とサイレンスベアーのオンラジをもう一度、聴きたい強者は

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