毎週月曜日にお届けする「オオサカマンスリージャーニー」。

大阪府内の市町村をひとつ取り上げ、1ヶ月にわたって深掘り。ゲストを招いて、DJの”おまり”こと三浦茉莉がインタビューします。ユニークなイベントやその町特有の取り組み、特産品など、町の魅力を幅広く発信するコーナーです。

さて、今月ご紹介するのは・・・大阪市!

戦国時代には豊臣秀吉が天下統一を成し遂げ 大阪城を築き、江戸時代には「天下の台所」として日本最大の商業都市となりました。大阪府中部に位置し、産業と文化が行き交う大阪市は1889年に市制施行し、1956年に政令指定都市へ移行しました。

現在の人口は約279万人。24の区からなる水の都「大阪市」は、生活・交通の利便性が高いだけでなく、大阪ならではの雰囲気や文化を感じられる活気のある街です!

画像: 2025年5月12日(月)マンスリージャーニー@大阪市⑤

おまり:今日は大阪市のヤングケアラー支援について、こども青少年局企画部企画課 西尾健佑さん、特定非営利活動法人ふうせんの会
事務局長代理 西川ゆかりさんにお話を伺っていきたいと思います。お二方、どうぞよろしくお願いいたします。

西尾さん&西川さん:よろしくお願いいたします。

おまり:西尾さんと西川さん、西&西コンビですね。面識というか、一緒に活動することはあるんですか?

西尾さん:ぼくまだ入って数週間ですので、今日が2度目ましてです。

おまり:そうなんですね。仲良さそうでしたよ。「緊張するね~」って。

西川さん:緊張する同士で(笑)。

おまり:いろんなお話、聞かせてください。まず、西尾さんが所属する大阪市「こども青少年局企画課」はどういうお仕事をする部署なのでしょうか?

西尾さん:こども青少年局は、生まれる前から青年期に至るまでのこども及び青少年にかかる施策を総合的に推進し、子育て家庭への支援や、課題を抱えるこどもに対する支援など、子育て当事者のライフステージに応じた切れ目ない支援を行っています。

そのなかで企画課は「企画グループ」と「こどもの貧困対策推進グループ」の2つに分かれておりまして、「企画グループ」は局業務の総合的企画・調査・連絡調整に関することを、私たち「こどもの貧困対策推進グループ」はこどもの貧困対策の推進に関することを行っております。

おまり:なるほど。そんな部署があるんですね。素晴らしいと思います。西川さんは「特定非営利活動法人ふうせんの会 事務局長代理」ということですが、「ふうせんの会」について教えてください。

西川さん:「ふうせんの会」は、家族のケアを担っていた子どもや若者、福祉の専門職が集まってできた団体です。ヤングケアラー・若者ケアラーが安心して交流できる場をつくり、彼らが夢をもって自分らしく生きていけるような社会を作るために活動しています。

おまり:心強いですね。そんなお二人が取り組む「ヤングケアラー支援」について、今日は伺っていきたいと思います。まず、近年ニュースなどでも聞くようになった「ヤングケアラー」という言葉ですが、あらためてどのような状況をさすのか、教えてもらえますか?

西尾さん:国の法律では、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義されています。こどもの場合は、家事や家族の世話などで、友達と遊ぶことや勉強することができなかったり、学校に行けなかったり、遅刻するなど、子どもらしく過ごせていない状態があります。また若者の場合は、自立に向けて必要な勉強や就職準備などの時間を奪われたり、ケアに伴い身体的・精神的負荷がかかったりすることで、負担が重い状態を指します。

おまり:さまざまな家庭の事情がありますが、やはり子どもには子どもらしく生活させてあげたいものですよね。西尾さんは身の回りでヤングケアラーの子ども達を見る機会があったそうですね?

西尾さん:私は大阪市職員になる前は、この3月まで私は高校の教員をしていました。9年ほどしていたのですが、担任をしている生徒の中には、要介護の祖母と2人暮らしをしていてなかなか学校に来れない生徒や、朝妹のお風呂を入れてから登校するため遅刻してしまう生徒などがいました。

彼らは決して勉強が嫌いな子ではなかったのですが、どうしても学校を欠席したり遅刻するしかない状況があり、教員の私自身もどうすることもできない歯がゆさをすごく感じていました。

おまり:学校の先生が子どもたちの異変に気付く場面が多いのかもしれませんね。大阪市ではヤングケアラーに関する相談窓口があるんですよね?

西尾さん:はい。各区役所にヤングケアラー相談窓口を設置しています。自分はヤングケアラーかもしれない、近くにヤングケアラーではないかと気になるこどもがいる、そういった場合はひとりで悩まずに各区役所の相談窓口にぜひ相談・連絡していただければと思います。

おまり:青年までとなると、自分がヤングケアラーと感じるのも難しいのかなと。

西尾さん:そうですね。ふだん自分がしていることは普通だと思っているので。でも、まわりからみると、しんどい状態ってことはたくさんあると思います。

おまり:そうですよね。当の本人ではなくても、周りから見て「あの子、かわいそうな状況かもしれないな」と思ったら窓口に伝えてもいいってことですよね?

西尾さん;そうですね。一度、区役所に相談に来てもらったらと思います。

おまり:それはすごい心強いですね。ヤングケアラーというと、家族の代わりに幼い兄弟の世話をしているとか、慢性的な病気の家族の看病をしているなどが頭に思い浮かびますが、親が外国籍で通訳になっているケースもヤングケアラーになるんですね。

西尾さん:そうなんです。たとえば大阪市だと、お母さんが病院に行くために付き添うだとか、日常生活を送るために子どもの通訳に頼っている方はいらっしゃるので、こどものケア負担を軽減することを目的として通訳者を派遣し、区役所での行政手続き等に同行して通訳を行う、通訳派遣事業も行っています。こちらも各区役所のヤングケアラー相談窓口で相談・申請ができます。

おまり:相談を受けるだけじゃなくて、実際にどうすれば子どもが勉強したり学校に行けたりするようにやってくれるのが、ものすごく心強いなと思います。

ヤングケアラーと言われる子どもたちに「ケアから離れる時間を作ってあげたい」「ひとりで抱え込まず相談してほしい」と考える大阪市が始めた「ヤングケアラー寄り添い型相談支援事業」についても教えてください。

西川さん:令和3年度に実施した大阪市立中学校生徒を対象としたヤングケアラー実態調査では、中学生の約10人に1人が家族のケアをしているということが分かっています。「ヤングケアラー寄り添い型相談支援事業」について、ふうせんの会が委託を受け、市内の中高生世代を対象に、ヤングケアラーピアサポート相談とリフレッシュイベントを行っています。

おまり:自分はヤングケアラーかもしれない…と感じている中学生が10人に1人もいるんですね。その現実にびっくりしましたけども、そんな中高生を対象にしたヤングケアラーピアサポート相談について詳しく教えてください。

西川さん:実際に家族のケアをしている中高生から、LINEやXなどSNSを使って相談を受け付けています。同じように家族のケアをしてきたスタッフや社会福祉士など専門職の相談員がお返事しています。

また、ヤングケアラーの周囲にいる大人からの相談も受け付けています。学校の先生や福祉関係の方などがヤングケアラーの存在に気付いて、私たちふうせんの会に連絡をくださいます。一緒に支援内容を検討したり、ヤングケアラー本人が同意すれば学校に訪問して直接話を聞くこともあります。

おまり:なるほど。リフレッシュイベントとはどのようなものなのでしょうか?

西川さん:ケアが必要な家族から少し離れて、中高生が自分の時間を過ごしてリフレッシュできるイベントを月に1回実施しています。月によって内容は異なりますが、みんなでご飯を食べたり、工作をしたりして楽しめるものや、働く大人と交流して将来について考えてみるという内容も実施しています。中には自宅からオンラインで参加できるイベントもあります。みなさんの興味のあるイベントにぜひ参加してもらえたらと思います。

おまり:その他にも、さまざまなサポートを行っているんですよね?

西川さん:はい。福祉制度など、役に立つ制度についてご案内したり、必要があれば制度利用のお手伝いをしています。制度を利用するための申請は複雑な場合も多いですが、私たちが一緒に行うことで、少しでも負担が少なくなればいいなと思います。

その際には、区役所の申請窓口へ一緒に行く「同行支援」も行っています。他にもケアが必要な家族がいる場合に、ヤングケアラー自身の進路に関する困りごとが出てくる場合が多いです。例えばお母さんが病気で、そのケアをしている子どもがいたら、お母さんを気遣ってなかなか自分の進路について相談ができない、ということもあります。学校の先生が熱心に考えてくれる場合もありますが、先生もたくさんの生徒のことを考えているので、その子だけに時間を使えるわけではありません。そういった時には私たちが一緒に進学先について調べたり、高校見学や大学のオープンキャンパスなどへの同行、奨学金申請等の書類作成のサポートを行うことができます。

おまり:思い出したんですけど、磯村勇斗さんが主演していた「若き見知らぬ者たち」っていう映画、知ってます?ヤングケアラーのお話なんですけど、主演の磯村さんがヤングケアラーなんですけど、どうしても抜け出せないんですよ。何か助けられる制度をつくってほしいって、その映画を見た感想で、そういう制度やシステムがないのかって怒りに似たような感想を覚えたんですよね。大阪には、こんな素晴らしい制度があるんだって思ったら、泣きそうになってきました。

子どもたち自身が声を上げるのはかなり難易度の高いことだと思います。周りの大人が気付いてあげることも大事だと思うし、その声を相談する場所が必要。まさにそのような活動をされているように感じました。

西尾さん:子どもたちはそれぞれの生活の中で、必死に生きています。抜け出したくても、しんどくてもしんどいと言えない子どもたちや、まだ自分がしんどいと気付いていない子どもたちもたくさんいます。ヤングケアラーという言葉や現状がもっと広まることで、子どもたちのしんどさは少しずつでも改善されていくと思います。

おまり:そういう子どもたちと触れ合って感じることはありますか?

西尾さん:それが当たり前だと思っている彼らからしたら、遅刻しても仕方がない、だって面倒みないとあかんねんもんって。実際にそういう子達がたくさんいました。他の子と違って帰らないといけない、宿題する時間もない、そういったところに僕たち行政がサポートする窓口を開いておくことが大事なのかなと思います。

おまり:そうですよね。ケアされている方が悪いわけどもない、誰のせいでもない、誰も悪くないなかで、子どもの可能性が縮められているというのは悔しいですし、こういうサポートは本当に素晴らしいと思います。

自分がヤングケアラーだとわかっていない子どもたちもたくさんいるのかもしれません。まずは知ることが大事ですね。詳しくは「特定非営利活動法人ふうせんの会」と検索してみてください。

▼特定非営利活動法人ふうせんの会

https://ycballoon.org/index.html

おまり:ではあらためて、西尾さん・西川さんにとって大阪市の好きな所、教えてください。

西尾さん:僕は大阪市の好きなところは人のあたたかさです。最近0歳の子どもとよくお出かけをするのですが、いろんな人に席をゆずってもらったり、かわいいねと声をかけてもらえて、大阪の人ってあったかいな、大阪の人情っていいなと思っています。

おまり:子育てしやすいですよね。西川さん、どうですか?

西川さん:私も西尾さんと似ているんですけど、大阪は人と人との繋がりが温かいなと感じます。ふうせんの会で現在スタッフとして活動している元ヤングケアラーの話なんですが、家族のケアで大変だった所を近所の方が気付いて、ふうせんの会に紹介してくださいました。近所の方のおかげで、その方は今ふうせんの会のスタッフとしてヤングケアラー支援に力を注いでくれています。

おまり:素晴らしい循環ですね。では最後にリスナーのみなさんへ一言お願いします。

西尾さん:ヤングケアラーという言葉の認知度は少しずつ広がってきていますが、まだまだ困っている子どもはたくさんいると思います。みなさんの周りにいるお子さんに対して、今一度「困っていることはないかな?しんどそうではないかな」という目を向けていただきたいと思います。もし何かありましたら、区役所の各相談窓口に来ていただけたらなと思いますので、よろしくお願いします。

西川さん:今日聞いてくださった方の中には、もしかしてヤングケアラーって自分のことかな?とか友達にそういった子がいるかも?と思った方がいるかもしれません。困っていることが無くても、聞いてみたいこと、聞いてほしいことなど気軽に連絡してください。同じように家族のケアをしてきたスタッフがいるので、安心して連絡してほしいと思います。

子ども達の周りにいる大人の方たちには「この子もしかしてヤングケアラーの可能性があるかも?」という視点を持って、接していただきたいと思います。家族のケアをすることが決して悪いわけではありません。ただ家族のケアをすることで、子どもたちが本来すべき勉強することや、友達と遊ぶことなどができなくなってしまう場合には、支援が必要になる可能性が高いです。みなさんの「もしかして?」という気付きで救われるヤングケアラーがいるかもしれません。気軽にご相談いただきたいなと思います。

おまり:この2本柱で子ども達の未来の可能性を広げてくれるんだなと思うと、すごくうれしくなりました。今日はこども青少年局企画課 西尾健佑さん、特定非営利活動法人ふうせんの会 事務局長代理 西川ゆかりさんをスタジオにお迎えしました。ありがとうございました。

西尾さん&西川さん:ありがとうございました!

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