
平安時代初期、天長年間(824~834年)に嵯峨天皇の勅願により、弘法大師(空海)が開いたと伝わる「今熊野観音寺」さん。東山の山中に光明がさし瑞雲(めでたいことの前兆として現れる雲)が棚引いているのを見た弘法大師が、不思議に思ってその方向へと進んでいくと、白髪の翁と出会ったそうです。その翁は熊野権現で、「ここに一宇を構えて観世音を祀り、来世の衆生を利益し救済されよ」と、一寸八分の十一面観音像と宝印を託して姿を消されたそうです。弘法大師は、熊野権現のお告げどおり一堂を建て、自ら十一面観音像を刻み、託された小さな観音像を胎内仏として納め 奉安されたのがはじまりと伝わっています。
平安末期の1160年、熊野権現を篤く信仰されていた後白河法皇(当時は上皇)が、この地に熊野那智権現を勧請され、ご本尊を本地仏として、山号を「新那智山」と定められました。熊野詣が盛んになるにつれて、今熊野観音寺も多いに栄えたそうです。
ご本尊は、弘法大師が自ら彫刻したと伝わる一尺八寸の「十一面観世音菩薩」。秘仏として祀られており、同じ姿のお前立をお参りします。弘法大師が熊野権現より授かった、天照大神作の十一面観音菩薩が胎内に納められているとされています。頭痛・病気封じ、知恵授かりの霊験あらたかで、「頭の観音さん」としてたくさんの信仰を集めています。
この春、新スポット「閑坐 -KANZA-」が誕生!
境内に長らく閉められていた休憩所がリニューアルされ、「閑坐 -KANZA-」というお茶所として4月25日にオープンされました。閑坐とは、禅の言葉「閑坐聴松風(かんざしょうふうをきく)」に由来し、喧騒を離れ、静かに心を落ち着けて坐るという意味。開放的な窓の外に生い茂る新緑のモミジが、水を張ったテラスや床に映りこむ様も美しいんです。秋の紅葉も楽しみですね。
境内には、開創当時、弘法大師が観音様を安置するのにふさわしい霊地を求めて、錫杖で地面をつくと湧き出たと伝わる「五智水」という霊泉があるんですが、閑坐では、その霊水で点てたお抹茶と、和菓子がいただけます。
お茶所「閑坐 -KANZA-」は、午前10時~午後4時(午後3時45分受付終了)
拝観志納料は、お抹茶と和菓子の接待付きで大人2,000円(※季節により変動の場合あり)