毎週月曜日にお届けする「オオサカマンスリージャーニー」。
大阪府内の市町村をひとつ取り上げ、1ヶ月にわたって深掘り。ゲストを招いて、DJの”おまり”こと三浦茉莉がインタビューします。ユニークなイベントやその町特有の取り組み、特産品など、町の魅力を幅広く発信するコーナーです。
さて、今月ご紹介するのは・・・堺市!
堺市は、世界三大墳墓の「仁徳天皇陵古墳(にんとくてんのうりょうこふん)」をはじめ、大阪唯一の世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」のある 大阪で人口・面積が2番目に大きい都市です。
古墳を作る技術が、世界中のシェフに愛用されている「堺の包丁」や、シマノの「自転車」などの現在の産業にもつながっています。また、中世の時代に貿易都市として栄えたことで、様々な文化も発展。かの有名な茶人「千利休」が生まれ育った文化都市でもあります。

おまり:今日は株式会社青木刃物製作所 彫金師 窪田美知子(くぼたみちこ)さんと、堺市・万博調整担当課長 松岡栄美子(まつおかえみこ)さんに、「堺市と刃物」というテーマでお話を伺っていきたいと思います。窪田さん、松岡さん、よろしくお願いします。
お二人:よろしくお願いします。
おまり:では、まず松岡さん、堺市の刃物の歴史についてあらためて教えてください。
松岡さん:包丁やはさみをまとめて堺刃物と呼んでいるのですが、その歴史はなんと600年にも及びます。堺には世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」の築造で、鍬や鋤などの鉄製道具をつくる鉄加工の礎がありました。16世紀にポルトガルから鉄炮やたばこが伝来し、たばこの葉を刻む包丁の製造が盛んになったんです。
おまり:そういうきっかけだったんですね。もともとは鍬や鋤などの鉄製道具をつくる鉄加工の礎があったからなんですね。
あとたばこの葉を刻む包丁…どんな包丁なんだろう。興味深い。
松岡さん:そうですよね。私も実物は知らないんですが、たばこ包丁の切れ味はすごくて、江戸幕府に「堺極(さかいきわめ)」の極印を入れて販売することを認められたんですね。その後、調理用の包丁に派生して発展して、その伝統と技術を今も受け継いでいます。
日本の各地に刃物の産地はあるんですが、堺の刃物の特徴はなんといっても分業制です。鍛造、研ぎ、柄付けを分業して行うことで切れ味、耐久性、そして美しさを生み出しています。今では世界中のシェフに堺刃物が愛用されています。
おまり:600年の歴史がびっくりですし、今や世界中のシェフに愛用されているなんて、すごい切れ味なんだろうなと想像します。
松岡さん:はい、そうなんです。食材の繊維や細胞膜を壊すことなく切ることができるんですね。なので素材のうまみを中に閉じ込めることで触感を損なうこともありません!切った食材が刃から離れやすい点も非常に高く評価されています。
おまり:なるほど。窪田さんは海外を飛び回っているという噂を伺ったんですが本当ですか?
窪田さん:そうですね。アメリカが多いのですが、様々な海外の展示会や代理店のイベントに参加させていただいています。そこでは、包丁をご購入いただいた方に名入れ無料サービスを行っています。時にはお客様のご要望に応じて絵を彫ったり、ワンポイントを彫ったりしています。

おまり:今、目の前に並んでいるんですが美しすぎて!こんな包丁、見たことがありません。芸術品ですね。
窪田さん:ありがとうございます。うれしいです。アートと包丁を掛け合わせた感じですね。
おまり:アートと包丁、デザインも和な感じがして、これは海外の方が喜ばれるだろうなと思うんですが、海外の方はどんな反応をされるんですか?
窪田さん:本当にお客様の名前や絵を彫ってあげると、目を輝かせて喜んでくれるんですよね。英語のお名前の方が多いですが、それを漢字にしてあげたりすると、皆さん本当に喜んでくれます。名前を機械ではなく手彫りで彫ることで、世界に一つだけの一丁がその場で出来上がるんですよね。自分の磨いた技で、目の前の人を幸せにできる瞬間であり、私にとって一番のやり甲斐を感じる瞬間です。
おまり:すばらしいです。窪田さんは彫金師ということなんですが、これは堺刃物の中では珍しいのですか?
窪田さん:鍛冶師や研ぎ師は比較的多くいらっしゃるんですが、包丁に刻む彫金師という仕事はあまり聞いたことはないですね。私は幼い頃から職人になりたくて、特に日本の伝統工芸に携わる職人になりたかったんです。日本の手作りのものづくりの素晴らしさを世界に発信する人になれたらなと漠然とした夢がありました。だから就職活動をするにあたり、着物や和紙、畳、陶芸、様々な日本の伝統産業に関わる仕事を見に行きました。その中で日本の包丁を見た時に、ビビっ!と直感でくるものがあって、全国の包丁屋さんの門を叩いたわけです。そのなかで、青木刃物製作所に拾ってもらって今に至ります。
たくさんの包丁屋さんがある堺で、うちの会社でしか出せない包丁を作りたいという熱意がありまして、包丁の表面に彫刻を施すことを始めました。注文もたくさん入り、今では二年待ちの状態です。
おまり:え~!すごい2年待ち・・・!大人気なんですね。こちらに現物をお持ちいただいてるんですが、龍とかウロコの一つ一つまで彫られていて…どうなってるんですか?このキメ細やかさは。
窪田さん:美は細部に宿ると思ってまして、細かいところをいかに丁寧に繊細にすることで、全体の美しさが変わってくると思うんですね。たとえば桜だと、めしべ・おしべまで細かく点を打ってあったりします。
おまり:この富士山も素敵ですね。
窪田さん:ありがとうございます。包丁の霞がかかった部分があるんですが、それを雲海に見立てて、借景じゃないですが、雲海から富士山がニョキッと出てくるデザインに仕上げました。
おまり:あとは舞妓さんが彫られているじゃないですか。本当にキラキラで上品で高級感があってびっくりします。
窪田さん:デザインは今、200種類以上あります。
おまり:そんなにあるんですねー!あまりにも美しすぎて、料理には使わないですよね?
窪田さん:そうですね。ちょっと実用的ではないので、鑑賞用やお店の装飾品として買われる方が多いのかなと思います。バリバリ刃は付いているので切れるのは切れますよ。今日は実用的な一般的な堺の包丁も持ってきているので、試してみてみませんか?
おまり:目の前にトマトとまな板がずっとあるなと思っていたんです。この包丁もすごい変わってる。黒いですね。
窪田さん:テフロン加工が施されていて、海苔巻きの海苔やごはんがひっつかないようになっています。
おまり:いいですね。いつも濡らしたり油を塗ったりしていますけど、このままでいいんですね。
窪田さん:はい、手を切らないように気を付けてください。

おまり:あ~めちゃくちゃ切りやすいです。
窪田さん:良かったです。
おまり:しかも切り心地が気持ちいいです。手に持った感じ、軽すぎず、重いわけでもなく。
窪田さん:そうなんです。重みも大事なんです。
おまり:だから重みも手伝ってサクッと切れます。断面もすごくきれいですし。
窪田さん:力を入れなくても調理ができるようになると、料理がより楽しくなります。繊維がつぶれないので、たとえば玉ねぎを切っても泣かなくて済みますよ。この鋭さがおいしいお寿司も生んでいますね。
松岡さん:堺刃物は鋭い切れ味と、窪田さんの彫金や波紋などの美しさ、この両方を持ってるん刃物になります。
おまり:切れ味と美しさを両立した包丁ですね。そんな美しくて切れ味抜群の堺刃物はどこで買うことができるんでしょうか?
窪田さん:大阪では難波の道具屋筋でご購入いただけます。また、堺にまでお越しいただけますと、青木刃物製作所が併設している堺孝行ナイフギャラリーがございます。今日は堺市と一緒なので、ぜひ堺までお越しいただきたいですね!
松岡さん:ほかにも堺の包丁が勢ぞろいする堺伝匠館もありますので、そこでもご購入いただけますので、ぜひお越しいただきたいです。1階の「TAKUMI SHOP」では専門のスタッフが包丁の選び方などレクチャーしまして、それぞれのお客様の好みに合う包丁を見つけられると思いますし、2階の堺刃物ミュージアム「CUT」では、なんと刃物の歴史を学んでいただきながら、約300本もの包丁素材で作られたシャンデリアもありまして、そちらもご覧いただけるのでぜひお立ち寄りいただきたいです。また、春には「堺刃物まつり」というものもあり、たくさんの方が堺に来てくださいます。ぜひお越しください。
おまり:窪田さんは、7/28(月)万博で開催される堺のイベント「Craftsmanship Journey 万博の楽市楽座、堺と出会う一期一会」にもご出演されるんですよね?
窪田さん:そうなんです。大変光栄です。世界中から万博にお越しいただいたお客様にネームプレートを彫って差し上げます。
おまり:それ、すごすぎませんか?
窪田さん:無料で先着順です。
おまり:先着順なんですか?その場で出来上がるんですか?
窪田さん:はい、その場でできちゃいます。
松岡さん:整理券を配りまして、数に限りはあるんですけどね。
おまり:これは海外のお客さんは大喜びでしょうね。ではあらためて、窪田さんと松岡さんにとって、堺市の好きな所を教えてください。
窪田さん:私の好きな堺の場所は、灯台のある旧堺港です。いつも仕事終わりにそこをランニングするのが日課で。灯台の奥に沈む夕日がとても綺麗で、私の癒しの場所になっています。
おまり:いいですね。行ってみたい~。では松岡さんは?
松岡さん:実は私も窪田さんと同じで、堺旧港が大好きな場所です。実は万博期間中は堺旧港と万博会場の夢洲を結ぶ船が運航されているんです!なんと約30分の船旅で夢洲に到着します。船で万博会場に行くもよし、大切な人と夕日を眺めるもよし、潮風に吹かれながら、素敵な時間を過ごしていただける場所だと思います。南海堺駅から歩いてすぐの場所ですので、ぜひ訪れていただきたいです。
おまり:おふたりが同じ場所が好きだなんて。行ってみたくなりました。ではintense!リスナーに一言ずつお願いできますか。
窪田さん:万博会場で是非お会いできるのを楽しみにしております。
松岡さん:青木刃物製作所の窪田さんの実演も見られる日本の伝統文化をたっぷり体験できる堺のイベントは、7/28(月)に予約不要で開催しています!場所は大阪ヘルスケアパビリオン前リボーンステージです!目印は超巨大な鯉幟です!お待ちしております。

おまり:7/28(月)です。今日は、株式会社青木刃物製作所 彫金師 窪田美知子さんと堺市・万博調整担当課長 松岡栄美子さんに堺市の刃物の伝統産業についてお話を伺いました。お二方ありがとうございました!
お二人:
ありがとうございました!